苔テラリウム 大型作品の魅力とは『日本の森』に込めた屋久島の景色
更新日:10月7日
苔テラリウムの大型作品には、手のひらサイズにはない奥行きがある。

近年のテラリウムには西洋の花束や寄せ植えの「装飾」の感覚と異なる「自然再現」の要素が含まれる。和の園芸〜盆栽、いけばな、日本庭園などに宇宙空間や自然再現を意図する手法がしばしば見られる。
禅寺の庭も、盆栽も、その空間に小宇宙を見出してきたように、近年のテラリウムもそのガラス内の極小空間に宇宙が宿る。
Vesmirがつくる苔テラリウムも、石ひとつ苔ひとつに山や森の気配を宿らせることを意識している。
その中でも大型作品の「日本の森」は、ひときわ自然再現性のある一点。屋久島を思わせる景色を、ガラスの中に散りばめた。

山の稜線を描く
Vesmirの作品は手のひらに乗るサイズから大型まである。苔だけで魅せる手乗りサイズ。
そこから容器が大きくなるほど、中に入れられるものが増えていく。苔だけでなく、シダ植物や観葉植物。高さを出すための流木や石、基礎は造形材を使用して起伏を作る。
ラインナップの中でいちばん大きな30cm正方形(Vesmirではこれは大型と呼ぶ)は、山の稜線を描けるだけの余白空間がある。
小さな器では表現しきれないダイナミックな山の起伏を描く。または大自然の一角を切り抜く。
同じ小宇宙でも、表現できる自然の奥深さが違う。

神秘の森、屋久島を
30cmキューブ「日本の森」には屋久島のイメージが重ねられている。作り手自身、屋久島にはまだ足を運んだことがない。それでも信州や東北の苔の森を巡り思いを馳せてきた。
八ヶ岳や東北の森に通い、湿った岩や木漏れ日、シダの茂り方をひとつずつ観察してきた時間が、この一点に凝縮される。
行ったことのない場所への憧れを、実際に歩いた森の記憶で表現する。そんな作り方をしている。

上には陽、下には陰。
この作品に使われている植物は、苔だけでも五種類以上。
イワオモダカ、ヘラシダ、ヒメチャセンシダ、コウザキシダといったシダ植物も加わる。
配置には理由がある。壁面の高い位置には、陽を好む苔を。水はけを必要とする植物と、そうでない植物を隣り合わせるのは、本来難しい組み合わせ。それでも、日当たりや湿度の違う場所にそれぞれを置くことで、一つの器の中に小さな生態系ができあがる。
ただ並べるのではなく、自然の中にある構造をそのまま持ち込む。
半年という時間
土台から完成まで一年。一度に何十時間もかけるわけではないが、少しずつ足して、引いて。
植物が根付くのを待ちながら、凹凸をつくり直す。うまく根付かないこともあれば、思いがけない場所で美しく育つこともある。
そうやって、作り手が費やした時間の分だけ、器の中の景色は自然に近づいていく。
この器を置く人の暮らしの中に、自然が溶け込む。自然の癒しを肌で感じられる。テラリウムは自分時間の相棒である。
目指しているのは、自然そのもの
意識しているのは山や森をそのまま切り取ったような自然の再現。見る人がふと、山の一角が部屋に来たような感覚になる。そこを目指してつくられている。
この「日本の森」を、暮らしの一角に。



